ショートショート:幸福と快適
A君は健康だ。都会のタワーマンションに両親と暮らしている。お金持ちで、何不自由なく暮らしている。父は会社経営者でたまにしか帰って来ない。母は大手企業に勤めていて、夜遅くに帰ってくる。夜はコンビニ弁当や冷凍食品をレンジでチ…
A君は健康だ。都会のタワーマンションに両親と暮らしている。お金持ちで、何不自由なく暮らしている。父は会社経営者でたまにしか帰って来ない。母は大手企業に勤めていて、夜遅くに帰ってくる。夜はコンビニ弁当や冷凍食品をレンジでチ…
この数日、空気が重い。急に胸が締め付けられるようで涙が止まらない。なぜだ。数日前迄は君の旅立ちを祝福し安堵していたのに。今度の週末に引っ越しを済ませば、来週からはもうここには帰って来ないのか。そんなことがあるのだろうか。…
今、腕の中に白髪の頭を抱きしめている。45年生きてきて初めての経験だ。なぜもっと早くこうして抱きしめなかったのだろう。 あなたはいつも強かった。あなたはいつも寡黙だった。あなたはいつも論理的だった。 あなたにいつも褒めて…
いつも喧嘩ばかり。でも、心の中ではこう想っている。愛している。 だが、彼女は俺がこう想っていることなど予想もしていないだろう。無理もない。もう結婚して30年ちかく経つし、お互い昔の面影はどこえやらだ。子供たちが成長して家…
今日は忙しいからランチはコンビニ弁当で済まそう。デスクで弁当を食べながらネットニュースをチェックしていた。「えっ、エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなったんだ!」「まだ65歳か。若いな。がんだったのか…」「懐かしいなぁ。学生…
隣の席の先輩はかわいそうだ。新しいテーマを温めていて、いつか提案したいらしい。でも、高圧的な上司のせいでいつも潰されているらしい。たしかにうちの課長は、口は悪いし好き嫌いも激しいタイプだ。なんとか先輩の希望を叶えてあげた…
眠い目をこすりながら会社への道を歩いていた。県庁所在地だと言うのに駅前の百貨店は相変わらずシャッターが閉まったままだ。先月、50年の歴史に幕を閉じた。郊外のショッピングモールやネット通販に押されたためだ。子供の頃は毎週日…
子供の頃、プラモデルを作るのが好きだった。 説明書を見ながら部品を丁寧にちぎり取り接着していく。 接着剤のシンナー臭が心地よかった。 プラモデルを作っている時だけは夕食も好きなテレビも忘れて没頭できた。 接着剤がはみ出し…
明日は近隣の看護学校の寮生と社交ダンスパーティーだ。 大学の部活が終わった後に先輩達とさんざん練習したので、ちゃんとリードすることができるだろう。 ジルバで転ばないようにだけ気を付けよう。 可愛い子がいるといいなぁ。 最…
朝、居間の仏壇に手を合わせ、ご先祖様に感謝する。亡くなった家族や親戚の顔と声が頭に浮かぶ。一人だけ、父方の祖母の声だけが聞こえない。会ったことがないからだ。 祖母は戦時中に若くして亡くなった。その時、父はまだ学生だった。…
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